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札幌高等裁判所 昭和35年(ネ)297号 判決

北海道上川郡東川町西六号北二二番地

控訴人

石井義勝

旭川市宮下通一〇丁目

被控訴人

上川税務署長

今永伸二

右指定代理人

杉浦栄一

千葉正道

菊地美津雄

佐藤隆一

右当事者間の昭和三五年(ネ)第二九七号不当課税取消請求控訴事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実および理由

控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対して昭和三一年一一月六日なした控訴人の昭和三〇年度の総所得金額を金五三四、一七三円とする再更正処分のうち総所得金額を金三四二、〇六二円と変更する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述および証拠の提出、援用、認否その他の証拠関係は、控訴人において、「被控訴人はなんら適確な資料に基かず資産負債増減法と称して杜撰な方法によつて控訴人の所得を推計して課税したものであつて、控訴人が本訴を提起した当初においては、被控訴人は専ら本件訴は不適法であるとのみ主張していたが、差戻前の控訴審において本訴が適法である旨判決されるや、自己の推計した計数に合致させるように逆算してその裏付け資料を計画的に作成したものであつて、被控訴人提出の資料は控訴人の所得算出の資料とはなしがたい。また控訴人の田の所得を作付面積六五畝について反当り収穫量二、五四〇合、作付面積三七〇畝について反当り収穫量二、二六〇合を基準として農業所得標準を適用して算出するとすれば、控訴人の収穫総石数は一〇〇石一斗三升となる筈であるが、控訴人の昭和三〇年度の実際の収穫総石数は六〇石であつたのであるから、被控訴人主張のように農業所得標準率によつて控訴人の農業所得を推計することは不合理であること明白である。」と陳述し、差戻前の控訴審において当裁判所が職権で控訴人本人を尋問したほか、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

当裁判所が控訴人の本訴請求を失当とする理由は、成立に争のない乙第一二号証の二によれば控訴人が昭和三〇年度において政府に売渡した米穀の数量が合計五六石であつたことが認められるけれども、控訴人が同年度において自家消費その他に充てた米穀の数量についてはこれを確認するに足りる資料がないから、結局控訴人が同年度に収穫した実総量を認定するに足りる資料に欠けていることに帰し、控訴人が右年度の収支の実態を明確ならしめる資料を有していない本件において被控訴人が控訴人の同年度の農業所得(所得税法第九条第一項第四号、同法施行規則第九条による収穫時における価額)を農業所得標準率を適用して推計したことは合理的であるといわなければならないと附加するほか、原判決と同一であるから、その記載を引用する。(但し原判決理由第二の三の(一)の(A)の(3)家畜所得金額(イ)中「乙第一号証」とあるは、「乙第一四号証」と訂正する。)

よつて控訴人の本訴請求を棄却した原判決は、相当であるから、民事訴訟法第三八四条により本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 南新一 裁判官 輪湖公寛 裁判官 藤野博雄)

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